母が私の本を書いた
母親が私のことを書いた本を自費作成し、送ってきた。
読んでくれというので読んだ。その本には私が産まれた時から中学生までの様子が書かれている。
感想を求められたので、新鮮味がないと答えた。
母の欲しい言葉は分かっている。こんなに私のことを想ってくれてありがとうとか、苦労して育ててくれてありがとうとか、よかったとか、感動したとか、そういう言葉が欲しいのだろう。
分かっていたけれども、その言葉を与えることはできなかった。自分の中に抵抗があったのだ。
母はこの本を私のことを知っている親しい人何人かに送ったらしい。その母の本を読んだうちの一人から、娘さんは小さい頃から色んな複雑な思いに揉まれて生きてきたんですね。大変だったでしょうね。と言われたそうだ。
それに対して母は、他の子だったら病気とかになってしまうかもしれないけど、うちの娘はしっかりしているので大丈夫ですと答えたそうだ。大丈夫かどうかは私が判断することであって、母が判断することではない。
それに私のプライバシーのことなのだから勝手にいろいろな人に送られては困る。私が幼少期に仲が良かった子のお母さんにも送っていたのを知った時は流石に抗議した。
そもそも書いてくれとも頼んでいないのに、言い方は悪いが勝手に書き、書いている最中あたかも私のために書いてやったと言わんばかりの態度をとってくることがしんどかった。書いている最中も喧嘩をすると、せっかくあなたの本を書いているのに無意味だねと言ってくる。母の思いは分かるが、それは押し付けなのだと言いたかった。でもそう言うと母は傷付くし怒り出すだろう。
何はともあれ、私は母の本を読んで暗い気持ちになった。あまり思い出したくないことが多かったし、
だから新鮮味がないと答えざるを得なかったのだ。という言い訳をしておく。
母の欲しい言葉をかけることができなかった自分に罪悪感も抱く。
早速母からも
新鮮味がないって事は第二弾は書かなくていいってことだねやら、態度が横柄だとか、私の本を貶すのですっかり自信を無くしただのLINEが来ていた。
これに返答というか弁解していかないといけないと思うと憂鬱になってくる。
やっぱりお世辞でもよかったよとでも言っておけばよかったか。